クーリング・オフとは、訪問販売や電話勧誘販売など、 不意打ち性があり、消費者が冷静に判断しにくい取引について、契約書面を受け取ってから一定期間内であれば、 無条件で契約の申込みを撤回し、又は契約を解除できる制度です。
通常、いったん成立した契約は守らなければなりません。
しかし、特定商取引法では、強引な勧誘や、十分に比較検討する時間がないまま締結された契約から消費者を保護するために、一定期間は頭を冷やして考え直すことができる制度が設けられています。
クーリング・オフは、単なる「返品制度」ではありません。
法律で定められた対象取引について、一定期間内であれば、 理由を問わず、消費者側から契約をなかったことにできる特別な制度です。
クーリング・オフの対象となる主な取引と期間
クーリング・オフができるかどうかは、どの取引類型に当たるかで異なります。
また、期間は、法定の契約書面を受け取った日を1日目として数えます。
1. 訪問販売(8日間)
自宅への訪問販売だけでなく、
街頭で呼び止めて営業所などへ連れて行く「キャッチセールス」、
電話やSNSなどで目的を明かさず呼び出して契約させる「アポイントメントセールス」なども含まれます。
2. 電話勧誘販売(8日間)
事業者が電話をかけて勧誘し、その電話をきっかけとして契約の申込みをさせる取引です。
電話中に契約する場合だけでなく、その後に郵便、電子的方法、再度の電話等で契約に至る場合も含まれます。
3. 特定継続的役務提供(8日間)
長期・継続的で高額になりやすい一定のサービス契約が対象です。
現在の対象は、次の7類型です。
■エステティック
■美容医療
■語学教室
■家庭教師
■学習塾
■パソコン教室
■結婚相手紹介サービス
ただし、すべての契約が対象になるわけではなく、業種ごとに定められた期間要件・金額要件を満たす場合に限られます。
4. 連鎖販売取引(マルチ商法)(20日間)
他人を勧誘して組織を拡大していくタイプの取引です。
消費者被害が大きくなりやすいため、クーリング・オフ期間は20日間と長めに設定されています。
5. 業務提供誘引販売取引(20日間)
「仕事を紹介するので収入になる」「副業になる」などと勧誘し、
その仕事に必要だとして教材、機材、研修、サポート等を契約させる取引です。
内職商法、在宅ワーク商法、モニター商法などが典型例です。
6. 訪問購入(8日間)
事業者が消費者の自宅等を訪問して物品を買い取る取引です。
いわゆる「押し買い」が問題となる分野で、一定期間内はクーリング・オフが可能です。
クーリング・オフ期間の数え方
クーリング・オフ期間は、法令で定められた事項を記載した書面を受け取った日から数えます。
単に何らかの紙を渡されたというだけでは足りず、法定書面として必要な記載事項や方式を満たしていることが重要です。
そのため、
・契約書面に必要事項が書かれていない
・クーリング・オフについての記載が不十分である
・書式や記載方法に重大な不備がある
といった場合には、期間の進行に影響することがあります。
クーリング・オフの通知方法
現在の特定商取引法では、クーリング・オフの通知は、書面だけでなく電磁的記録でも可能です。
書面による通知
はがき、封書、内容証明郵便などによる通知です。
昔からよく使われてきた方法であり、相手方に通知した事実を後から証明しやすいという利点があります。
電磁的記録による通知
電子メール、ウェブサイト上の専用フォーム、FAX、USBメモリ等の記録媒体を利用した通知などが考えられます。
法改正により、こうした方法でもクーリング・オフが可能になりました。
実務上の注意点
クーリング・オフは、相手方に「通知を発した」ことが重要です。
後日のトラブルを避けるため、次のような証拠を残しておくことが大切です。
内容証明郵便・特定記録郵便・書留:発送日や内容の証明に有効です。
電子メール:送信日時、送信先、本文、送信済み画面を保存します。
フォーム送信:送信完了画面のスクリーンショット、受付メール等を保存します。
FAX:送信結果報告書を保管します。
法律上は電磁的記録でも可能ですが、相手方との争いが予想される場合には、内容証明郵便等を併用する方法が実務上はより安全です。
クーリング・オフをした場合の効果
クーリング・オフが適法に行われると、契約は最初からなかったことになります。
この場合、事業者は、
・損害賠償
・違約金
・解約手数料
などを請求することはできません。
すでに代金を支払っている場合には、事業者はその金額を返還しなければなりません。
また、商品を受け取っている場合には返還が必要になることがありますが、商品の引取り費用は原則として事業者負担です。
役務提供がすでに始まっている場合でも、適法なクーリング・オフであれば、その対価を請求できないのが原則です。
事業者が妨害した場合
事業者が、
・「クーリング・オフはできない」と虚偽の説明をする
・威圧的な言動で通知を思いとどまらせる
・期間が過ぎたかのように誤信させる
などの方法でクーリング・オフを妨害した場合には、通常の期間を過ぎてもクーリング・オフが認められることがあります。
このような場合には、書面の内容ややり取りの記録、録音、メール履歴などが重要になります。
通信販売には原則としてクーリング・オフはない
特定商取引法上、通信販売には原則としてクーリング・オフ制度はありません。
インターネット通販、カタログ通販、テレビショッピングなどでは、基本的には事業者が定めた返品特約に従うことになります。
ただし、広告に返品の可否や条件が表示されていない場合には、商品を受け取った日から8日以内であれば、消費者が送料を負担して返品できる場合があります。
そのため、通信販売では、購入前に、
・返品できるか
・返品期限は何日か
・送料は誰が負担するか
・開封後や使用後はどうなるか
を確認しておくことが大切です。
クーリング・オフが使えない、又は注意が必要な主なケース
次のような場合は、クーリング・オフが適用されない、又は制限されることがあります。
1. 3,000円未満の現金取引
代金を現金で支払い、その場で商品を受け取った場合など、一定の要件を満たすと対象外となることがあります。
2. 自動車
特定商取引法上、クーリング・オフの適用除外とされています。
3. 消耗品を使用・消費した場合
化粧品、健康食品などの指定消耗品は、法定書面に適切な記載があるときは、使用・消費した部分についてクーリング・オフできない場合があります。
4. 営業のため、又は営業として契約した場合
法人契約や、個人事業主が営業目的で契約した場合は、消費者保護の対象外となることがあります。
5. 店舗で自ら申し込んだ契約
一般的な店頭購入は、原則としてクーリング・オフの対象外です。
ただし、特定継続的役務提供や連鎖販売取引など、店頭契約でも対象になる類型はあります。
特定継続的役務提供の対象業種について
特定継続的役務提供は、以前は6業種として説明されることも多くありましたが、現在は美容医療を加えた7類型として整理されています。
そのため、古いサイトや記事では「6業種」と書かれていることがありますが、現在の説明としては7類型で案内するのが適切です。
クーリング・オフ通知を確実に残したい方へ
クーリング・オフは、制度そのものを知っていても、通知の仕方や証拠の残し方を誤ると後で争いになることがあります。
特に、
・内容証明郵便で送りたい
・通知文面をきちんと作りたい
・電子メールでも大丈夫か確認したい
・自分の契約が対象か知りたい
・事業者向けに法定書面や説明文を整えたい
といった場合には、早めの確認が大切です。
行政書士からのお勧め
クーリング・オフ通知は、現在は電磁的記録でも可能ですが、
相手方との争いが想定される場合や、確実な証拠を残したい場合には、内容証明郵便(配達証明付き)を活用する方法が、今でも実務上有力です。
また、事業者側にとっても、契約書面や概要書面の記載が不十分であると、クーリング・オフ期間や解約対応で大きな問題になることがあります。
特定商取引法に対応した文書整備、説明文の見直し、運用フローの整理は重要です。
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https://bluebirdgyosei.stores.jp/
■ 特商法の解説・情報サイト
特定商取引法の各類型や基本的な考え方については、以下のサイトでも分かりやすく解説しています。
https://www.itoh.fullstage.biz/tokutei/