2026年08月24日
事業計画は誰のために作るのか
起業するとき、事業計画を作成する大きなきっかけの一つが資金調達です。金融機関から融資を受けるために事業計画書を作る。もちろん、それは重要な目的です。しかし、事業計画は本来、金融機関に見せるためだけに作るものではありません。最も活用すべきなのは、経営者自身です。
起業前には、「こんな事業をやりたい」「こんなお客様に利用してもらいたい」「これくらいの売上を目指したい」と、さまざまな構想があります。しかし、頭の中で考えているだけでは、それぞれの考えが本当につながっているのか分かりません。文章と数字にして初めて、矛盾や不足している部分が見えてきます。
誰に商品やサービスを提供するのか。どのような価値を提供するのか。なぜお客様は自社を選ぶのか。いくらで販売するのか。どのようにお客様を集めるのか。そのためにいくら必要なのか。毎月どの程度の売上が必要なのか。こうしたことを一つずつ具体化していくのが事業計画です。
特に重要なのが「数字」です。「たくさん売りたい」では計画になりません。例えば年間1,200万円の売上を目指すのであれば、月平均100万円です。平均単価が10万円なら毎月10件の売上が必要になります。では、10件の契約を獲得するために何件の商談が必要なのか。その商談をつくるために、何をするのか。数字にすることで、目標が具体的な行動へ変わります。
そして、事業計画は未来を正確に予測するものではありません。起業前に作った計画どおりに事業が進むことの方が珍しいでしょう。だから、「どうせ計画どおりにならないから作っても意味がない」と考えるのは逆です。
計画があるから、現実との違いが分かります。予定より売上が少ない。思った以上に経費がかかっている。想定していた商品ではなく、別の商品が売れている。予想していなかったお客様から問い合わせが増えている。計画と現実を比較することで、「何が違ったのか」「なぜ違ったのか」「次に何を変えるのか」を考えることができます。
つまり、事業計画は「計画どおりに経営するためのもの」ではありません。「計画と現実の違いを知り、次の判断をするためのもの」です。
事業計画には、もう一つ大切な役割があります。それは、経営者自身の覚悟を確認することです。売上目標を書けば、その売上をどう実現するのかを考えなければなりません。人を採用すると決めれば、その人の給与を払い続ける責任が生まれます。設備投資をするなら、その投資をどう回収するのかを考える必要があります。数字にすることで、「やりたいこと」が「経営すること」へ変わっていきます。
そして、事業計画は一度作って終わりではありません。事業を始めれば、お客様も市場も自社自身も変化します。計画を見直し、実績と比較し、必要なら修正する。その繰り返しによって、事業計画は現実の経営に使えるものになっていきます。
事業計画は、金融機関に提出して融資を受けたら役目を終える書類ではありません。まして、立派な文章を書くことが目的でもありません。
どこへ向かうのか。そのために何をするのか。どれだけのお金が必要なのか。そして、今どこまで進んでいるのか。
それを経営者自身が確認するためのものです。
事業計画は未来を当てるための予言書ではありません。実現したい未来を具体化し、そこへ近づくための設計図です。だからこそ、起業するときだけでなく、事業を続けていく中でも事業計画を活用することが重要です。
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posted by itoh_gyosei at 00:00| 起業相談